『字を書く』ということ(読み書きの課題や手先の器用さについて)

私はずっと「字をきれいに整えて書く」ことだけを勉強し、ペン字講師となりました。

 

そしていろは塾を立ち上げ「きれいでバランスの良い字の形」と「鉛筆・ペンの持ち方」に注目して指導しておりました

 

ところが、小学生から大人の方まで数百人の皆さまの書きぶりを拝見するにつれ、『字を書く』という行為は「非常に複雑な課題を多く持った動作」であることがわかってまいりました。

 

 『字を書く』行為そのものを突き詰めていくと、「身体全体の使い方・発達」「文字の認知」「音韻意識」「視知覚の機能」「協調運動」など、学ぶべき課題は山のようにありました。

 

読み書き障害、発達性ディスレクシア、発達性協調運動障害(DCD)、学習障害(LD)などについて、言語聴覚士、作業療法士の研修や書籍で学びながら、自分ができる支援を常に模索しております。

 

「きれいな字の書き方を教える」とひと言で言っても、お一人おひとりの個性を総合的にとらえる必要があるのです。例えばこのようなことがあります。

 

 

●手本を見て書くことはできるが、何も見ないとどう書いてよいかわからなくなる

 

硬筆コンクールのようにお手本そっくりに書けることも大事ですが、それは単に「見た通りに書くことが上手い」ということであり、本当の意味で自力で『字を書く』こととは違います。

最終的に手本がなくても自分の目と頭でバランスを考えながら書けることを目指します。

 

●どうしても「正しい持ち方」にすることが難しい

 

書くことに精一杯で指の位置まで神経をはらうことが難しい場合は『字を書く』ことを優先しますので、持ち方を無理に変えることはいたしません。

(ただ、姿勢や腕の置き方などの工夫は必要ですので、より良い筆記のために様々な観点からアドバイスをしております。)

「鉛筆を持って書く練習」は、「しつけ」ではなく「運動機能のトレーニング」であると考えて取り組んでいます。

 

●どうしても誤字を書いてしまう

 

字形を整えて書くことよりも「間違いなく正確に書く」ことを確実にする練習に力を入れます。

 

 

いろは塾は、「誰もが一律にお手本そっくりの字を書く」ことを目指すレッスンはいたしません。

 

自分で『字を書く』ということは、お手本を見た通りにただ書き写すことではありません。

「言葉を聞く、話す」「文字を見る、読む、覚える、思い出す」「鉛筆を使う」といった数々の課題を積み重ねた上で実現できることです。

このどこかでつまづいてしまうと、自分で『字を書く』ことが難しくなってしまいます。

 

いろは塾は「文字の読み書き」におけるつまづきや困難についても学びを深め、『字を書く』という本質にしっかり目を向けてまいります。